英国の財務担当役員たちが考える監査改革とは

Galvanize

監査の改革は、英国で急速に具体的に実現が進んでいます。 2021 年 3 月 18 日、ビジネス・エネルギー・産業戦略省(Department for Business, Energy & Industrial Strategy:BEIS)は、国による監査およびコーポレートガバナンス体制を見直す大改革について 16 週間にわたる調査期間の開始を発表。この大改革により、米国サーベインス・オクスレー法(米国 SOX 法)に相当する英国法を制定することになります。

調査が首尾よく進んでいる中で、Galvanize は、英国の財務担当役員およびコンプライアンス担当役員がこの大改革にどの程度備えられているのか、知りたいと考えました。 当該役員たちにはどのような問題が思い当たるでしょうか。 そして、肝心な点ですが、思い当たればその次にどうするのでしょうか。

こうした疑問に答えを見いだし、大きく影響を受ける関係者の考えに独自の洞察を導き出せるよう、Galvanize は Censuswide の協力を得て、英国の上場企業(FTSE 100 に軒を連ねる企業 40 社を含む)で監査部門長やリスク管理部門長、最高財務責任者、財務部長といった役職に就く 250 名の方に調査を実施し、次のような結果を得られました。

個人の責任を求める声

3 月の発表で、英国同省は企業で経営に携わる役員に向けて次のように言いました。 「説明責任を負っているにもかかわらずその役目を果たしていない悪い役員や監査人は、責任を問われなければならない。 そこで、監査およびコーポレートガバナンス体制の見直し大改革の一環として、私たちは、深刻な間違いが生じている諸所で対応策を講じられるよう新たな監督機構を配置しようと考えています。」

非常に強い調子で述べられましたが、Galvanize が実施した調査の回答者は概ねこの意見に同意しているようで、 全体の 80% が、役員は会社の財務諸表の正確性に個人的に責任を負うと共に法的責任があるべきで、会社の報告や監査基準を守るという自らの義務に違反した場合は、罰金や停職、賞与の払い戻しといった処分を受けるべきだと答えています。

改革の提案内容が役員に責任を持たせ、役員会の怠慢に対し報酬が払われることを厳しく取り締まるのに十分な効果を発揮するか尋ねたところ、全体の 75% が、大改革がこの義務付けを実現するだろうと考えていました。

職場の改善に対する楽観的な姿勢

財務担当役員が日々の業務で SOX 法に類似するこの改革の恩恵を受けられると感じているかどうかについては、概ね肯定的な結果となりました。 調査回答者は特に次の点で大きな改善がみられることを期待しています。

  1. 組織がさらにレジリエンスを増す
  2. 統制環境が改善される
  3. リスクがさらに適正に管理され、データに基づく意思決定がされるようになる

広範な効果についての反応は賛否両論

こうした改革が、英国の職を守り、企業の破綻を回避し、世界有数の投資先という英国の評判を強めるという英国政府の大きな目標達成に功を奏するかという点については、様々な思いが交錯している。

調査回答者の 43% は企業統治への国民の信頼が増すと考えており、その一方で 23% は信頼を損ねると考えています。 英国の上場企業に対する投資家の信頼に関して言えば、全体の 42% がこの改革が市場に良い影響を及ぼすと考えており、30% が投資は減少すると反対意見を述べています。

おそらく最も意外なのは、この新たな監査改革が企業の破綻を防止するという点で実際に影響を及ぼすだろうと考えている財務の専門家は、たった 27% しかいなかったということです。 その上、43% は役員会の怠慢は増すのではないかと予想しています。

この結果が、政府が掲げる最も重要な目標で何か失敗をしていることを示していようと、企業の不正行為を根絶するという予期せぬ結果を明らかにしていようと(探せば探すほど、さらに多く見つけてしまう)、調査データは意外性を示しており、これが市場にもよく表れる可能性があります。

妨げとなる役に立たない技術

財務の専門家たちは、英国の SOX 法展開における自身の役割についてどのように考えているのでしょうか。 現状、非常に肯定的です。 調査回答者の 91% が、英国版の SOX 法が自分たちに何を求めているのか理解していると確信しており、78% が同法展開に態勢は整っていると回答しています。

しかし、本人たちは態勢も能力も整っていると自信にあふれている一方で、技術担当たちはそうではないようです。 この監査改革を取り入れるうえで大きな障壁となるのが、まだ対応できる段が整っていない技術です。調査回答者の 32% は、テックスタックはまだ十分ではないと回答しており、85% は改革の課題に対応するため技術面にもっと投資が必要だと回答しています。

特に次の 3 点に、対応が必要だと回答しています。

  1. 統制管理ソフトウェア
  2. レポートとビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェア
  3. 内部監査ソフトウェアと自動化

大多数は英国 SOX 法施行の延期を希望

調査回答者の間で聞かれる改革を期待する声と確信、そして万全の態勢をよそに、2/3 を超える数の回答者は実際には英国 SOX 法施行の延期を期待しています。 遅れに期待される理想的な期限は 2 年。そして 1/3 を超える数の回答者は、3~4 年の施行延期を期待しています。

そこで、Galvanize の International Managing Director を務める Keith Fenner にこの状況について意見を尋ねてみたところ、次のコメントを得られました。 「政府の監査改革は刻一刻と迫っており、企業はこれに対応できるよう態勢を整える必要があります。改革が延期となっても延期されなかったとしても、Brexit とコロナ禍がすでに企業に負担を与えており、加えてこの改革でさらに圧迫されることになるのは明白です。 組織は今のうちに技術面に投資をして、統制の基盤を強化する必要があります。そうすれば、リスクの一層の可視化、失敗の軽減、全体的なパフォーマンスの向上につながり、包括的な経済回復を促すことにもなるでしょう。」

調査の全容

刻一刻と迫る監査改革について、英国で活躍する財務の専門家たちが上で紹介した内容のほかにもどんな意見を持っているのか、詳細を知りたい方は、こちらから調査全容をご覧いただけます。

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